北川景子 映画「ファーストラヴ」!
北川景子 の映画「ファーストラヴ」です。
臨床心理士の真壁由紀の元にある本の執筆依頼が入りました。
由紀を北川景子が演じています。
それは、アナウンサー志望の容姿端麗な女子大生が画家の父・聖山那雄人を刺殺した事件について、被疑者である聖山環菜を取材し1冊の本にまとめて欲しいというものでした。
周囲は「就活に反対されたから父親を殺害した」と犯行動機を推測しましたが、逮捕後の取り調べで、環菜は「父を殺さなければならなかった理由が自分でもわからないので、動機はそちらで見つけてください」と言い放ちました。
由紀の夫・我聞の弟である弁護士の庵野迦葉が、環菜の国選弁護人に選任されていました。
迦葉と由紀は大学の同級生でした。
環菜の母が検察側の証人に立つことを知り、迦葉は由紀に協力を依頼します。
はじめて由紀が環菜と接見したときも、環菜は「動機は自分でもわからないから見つけてほしいぐらいだと言った」と言いました。そして「私、嘘つきなんです」とも。
由紀と迦葉、それぞれが環菜との接見や手紙のやり取りを進めていき、2人が環菜から聞いた話の内容を突き合せますが、つじつまの合わない部分があることに気づきます。
「環菜は本当のことを話していない」と由紀は考えました。それを踏まえて、由紀と迦葉は環菜や彼女の父親の那雄人の知人らから家庭環境について話を聞くようにしました。
環菜は小学生の頃から、画家である父親の絵のモデルをしていたそうです。デッサン教室に来る生徒の前で、何時間も同じポーズをとるモデルをしていたといいます。
環菜は美しい少女でしたので言い寄る生徒もいたそうですが、環菜はどの人も断ろうとせずに、皆を受け入れていたとも。
由紀は環菜に聞いてみました。「絵の生徒さんは好きだったの? 彼らに対する印象を、一言で表すとしたら?」。
由紀はポツリと「気持ち悪い」と答えます。
環菜が過去に心に問題を抱えるに至った経緯があると察した由紀は、環菜の手にあるリストカット痕も確かめ、真実を突き止めようとします。
由紀はまず環菜の母親・聖山昭菜の元へと向かいました。母親は一貫して「ぜんぶ娘のせいだ」と主張します。
由紀が環菜のリストカット痕について尋ねると、「手首の傷? 知ってますよ。鶏に襲われて怪我したときのものでしょう」という答えが返ってきました。
娘の言うことの真偽もわからないほど、娘に愛情がなかったのかと由紀は愕然とします。
その後の情報収集により、見えてきた聖山昭菜の人物像は、“夫の機嫌を取り、夫に従うだけの妻”というものでした。
母は娘の環菜にも、聖山那雄人は恩人だから従うようにという態度を崩しませんでした。なぜなら、環菜の実の父親は、那雄人と別れていた時に昭菜が同棲していた別の男だったからです。
そのあと昭菜と那雄人はよりを戻すことになるのですが、那雄人が許したために環菜は中絶されずに生まれてくることになります。
聖山那雄人は、女の子が生まれたから、自分の娘として戸籍に入れたというのです。
「俺が生まれてくるのを許してやったんだから、おまえは俺に恩返しをしなければならない。言うことを聞かなければ戸籍を抜くぞ」。
父の歪んだ教訓は、環菜の精神をむしばんでいったと思われます。
環菜は、父からひどく叱られて家出をしたこともあると言います。その時は行き場のない環菜をコンビニ店員の小泉が助けてくれ、部屋に泊めてくれました。
優しく接してくれる小泉に環菜は魅かれていきますが、環菜が中学生ということもあり2人は別れますが。環菜は小泉とのことが初恋だったと言います。
環菜は父親に逆らえず、デッサン教室のモデルをしていましたが、それは決して好きなことではありませんでした。
そのうちに、身体に傷があればモデルをしなくてもいいことに気が付き、環菜はモデルをしたくない一心でリストカットをするようになったのです。
環菜の育った家庭環境を知るにつけ、由紀もまた自身の生い立ちや、迦葉との関係について向き合っていくようになります。
子どもの頃、由紀は実の父親からネチネチとしたいやらしい目で見られていました。
まだ幼い由紀にはそれが性的な視線だとは理解できていなかったものの、本能的な恐怖と嫌悪はひしひしと感じていました。
そして、成人式の日。由紀は母親から「父親は海外で少女を買っていた」と聞かされ、自分の身にどのような危険が迫っていたのかを知ります。
由紀は心から傷つき、現実から目をそむけるように自暴自棄な生活を送るようになりました。
「性的なことなんてたいしたことではない」と自分に言い聞かせるように、どうでもいい男たちと体の関係を持ったりもしましたが、結局最後はむなしく傷つき、疲労感が残るだけ……。
由紀が大学の同級生の迦葉と出会ったのは、そんなどん底にいるときでした。いつしか由紀は迦葉と遊ぶことを楽しみに思うようになっていました。
迦葉も実の母親から酷い虐待を受けて育ったという過去がありました。由紀は彼に同類という意識を迦葉に持っていたのです。
けれども、由紀が不用意に迦葉に投げかけた言葉がきっかけで、2人の仲に亀裂が入りました。その後迦葉のことが忘れられない由紀は、何気なくカメラマンである迦葉の兄・我聞の個展を訪れます。
これが我聞との出会いであり、恋の始まりでした。もちろん我聞は由紀と迦葉とのことは知りません。
由紀と我聞が結婚し、迦葉が由紀の義弟になった今も、2人が笑いあい、そしてすれ違った日々を我聞に隠し続けています。
事件の裁判が近づく中、環菜は殺意を一転して否認。由紀は自身がクリニックで診療を受けていた頃を思い出しながら、初公判の日を迎えました。
事件のあった日、環菜は女子アナウンサーの採用試験の二次面接でした。せっかく二次面接まで進んでいたのに、環菜は急な体調不良で途中欠席しています。
なぜなら、アナウンサー二次試験の集団面接は、父親のデッサン会にそっくりだったのです。
男性ばかりの試験官からじろじろと見つめられる面接の場は、環菜にとって耐えられないものでした。
途中欠場によって面接試験に失敗したと思った環菜は、辛い現実から逃避するために、包丁を購入し、リストカットをします。
就活で失敗したから、自分で自分を罰して、それを父親に確認してもらわなければいけないと思った環菜は、手首から血を流したままで、父親の元へ行きました。
娘の自傷を目撃した聖山那雄人は、「もう子どものときに治ったと思ってた。おまえがおかしくなったのは母親の責任だから、あいつに電話してどこか頭の病院に連れていってもらう」と言いました。
父が環菜に背を向けてスマホを取り出そうとしたとき、止めようとした環菜ともみあいになり、父は足を滑らせます。支えようとした環菜の手に握っていた包丁が父の胸に刺さりました。
混乱した環菜はとにかく母親の指示を仰ぐため家に帰ります。「包丁が父親に刺さった」と説明すると、母親は言いました。
「勝手に包丁が刺さるわけがない」。そこからは口論です。
那雄人が死んだと悟ると、母親は叫びました。「私はこれからどうやって生きていけばいいのよ」。
母親は環菜が面接でパニックに陥ったことや、環菜の腕の傷については一切心配しなかったそうです。環菜は家を飛び出し、通報により逮捕されました。
法廷で当日の出来事を説明する環菜は、証言を次のように締めくくりました。
「亡くなってしまった父には申し訳ないことをしたと思います。だけど、じゃあ、どうすればよかったのか、私にもわからないんです」
「自分がおかしいことには気づいてたけど、病院にかかるようなお金もなかったし、母は自分で何とかしなさいと言うので、そうするものだとずっと信じてきました」
「私は、どうすればよかったんでしょうか。自分を抑えて試験を乗り切ることができたらよかったのに、と今でも思います。だけどあのときは無理でした」
裁判で環菜に下された判決は懲役8年。裁判中、由紀は環菜の母親の腕に環菜以上の酷い傷があることに気がつきます。
由紀は、多くの性虐待を受けた娘とそのことを見て見ぬふりする母親の事例を思い出しました。
性虐待を受けた母親もまた、誰かに性的な虐待や暴力を受けていた可能性があり、大人になると今度は自ら過去と似たような境遇に入っていくことがあるのです。
もしかしたら、誰よりも環菜が壊れていくことを恐れていたのは母親だったのかもしれません。それを直視すれば、自分自身の暗い過去と対峙することになるから、目をそむけたとしたら……。
由紀もそんな経験を持っています。環菜の事件はどこか迦葉や由紀の過去とも重なるもので、やりきれない気持ちになりました。
その後由紀は学生時代に迦葉と別れることになった理由に思い当たり、迦葉と和解します。迦葉と和解したあと、夫・我聞から尋ねられます。
「由紀は僕と結婚してよかったと思う?」「もちろん。あなたと出会ってからの私はずっと幸せだった」
我聞も頷いて、言いました。
「僕もだよ。迦葉は大事な弟で、由紀は大事な恋人だった。2人が触れてほしくないだろうと思って、今日までずっと黙ってきた。だけど、もしいつか君たちが和解したら、言おうと思ってた。今日が来て、僕もようやく由紀を独占できる」
由紀はゆっくり息を吐き、長年抱え込んでいた秘密が、消えていくのを感じました。
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