石原さとみ 主演舞台「密やかな結晶」”消滅”が起こる島!

2022年10月16日

石原さとみ主演舞台『密やかな結晶』です。

池袋の東京芸術劇場での公演、
芥川賞作家、小川洋子の同名小説を鄭義信による上演台本で舞台化しています。

難しいストーリーでしたが、
バラの花びらが舞台全体に舞い落ちる圧巻のラストシーン、
石原さとみのはっとする美しさが際立っていました。

海に囲まれた静かな小島。
この島では"消滅"が起こります。

香水や鳥、帽子など、様々なものが”消滅”していきます。
花、鳥、本といった物の記憶も一つずつ消滅していくという不条理な世界。
不思議な島です。

石原さとみ演じる“わたし”は、この島に暮らす小説家です。

“わたし”は両親を幼い頃に亡くし、「おじいさん」と二人暮らし。

おじいさんは、わたしのことを赤ん坊の時から見守り続けています。
なぜか、その頃からずっと若者の容姿をしています。

おじいさんを若手俳優の村上虹郎が演じていますが、
なんとも不思議な設定のキャラクターです。

鈴木浩介は“わたし”を担当する編集者R氏を演じます。

そして島の秩序を守る謎の組織「秘密警察」が登場します。
“わたし”の母は秘密警察に連行され死にました。
鳥の研究家だった父もなくなり、おじいさんだけが心安らぐ存在となっています。

この島にも、記憶が”消滅”しない人がいます。
彼らはそのことを隠して生活していますが、
秘密警察は手を尽くし、彼らを見つけて連行します。
島民が恐れる記憶狩りです。

“わたし”は日々自宅で小説を書き、その原稿を受け取りに編集者R氏が時々家を訪ねてきます。
“わたし”は今日も記憶が少しずつ消滅しているのを感じます。

ある日、“わたし”は編集者R氏から、記憶保持者であることを告白されます。
もう二度と、大切な人を秘密警察に奪われたくないと思う“わたし”は、
R氏を守るため、自宅の地下室に匿うことを決意します。

後半になるにつれ、R氏との繊細な会話劇が繰り広げられます。

石原さとみの迫真の演技が続きます。
体が少しずつ「消滅」していく恐怖におびえる“わたし”と、“わたし”の言動が理解できないR氏の葛藤が心に響きます。

やがて、“わたし”の片足が消滅し、歩けなくなります。

いつか “わたし”の全てが消滅する。
R氏はそんな“わたし”を、本来の豊かな記憶の世界へ引き戻そうと必死に彼女に語りかけます。

運命には抗えず、“わたし”は最期のときを迎えます。
もうすぐ命尽きそうな“わたし”をR氏は抱きかかえ、行くな、まだ行かないで。
と呼びかけます。

そして彼女は消滅します。
すると、一番最初に消滅した“バラ”がこの島に戻ってきます。

バラの花びらが舞台全体に舞い落ちる感動のラストシーンです。