長澤まさみ 女の子から大人の女性へと成長した彼女のメッセージ!

2024年4月7日

長澤まさみの素敵なインタビュー記事がありました。

軽妙な中に深みのある文章です。

昔大好きだったファッション雑誌に、ひときわ笑顔のまぶしい女の子がいた。
彼女の名前は、長澤まさみ。女優として活躍する彼女は、愛らしい顔立ちと抜群の演技力で、多くの女性たちを虜にしている。
私もそのひとりだ。小学生のときに初めて読んだファッション誌『ピチレモン』では、パッとひまわりが咲いたような満面の笑顔で誌面を飾っていて、当時田舎に住んでいた私にとってあこがれの存在だった。

映画『世界の中心で愛をさけぶ』『モテキ』では、フィルム越しの彼女を見て「こんな女性になりたい」と思いながら、一緒に年を重ねた記憶がある。

誌面の彼女に出会ってから、20年弱。この取材で初めて対面したとき、なんて穏やかな空気感を纏う女性なんだろうと思った。
まるで彼女のまわりだけゆっくりと時が流れているような、不思議な雰囲気。
そしてあの日見た雑誌や映画とはまたちがった、大人の女性らしさがあった。
2018年1月20日公開の主演映画『嘘を愛する女』でも、アラサー女性特有の不安や葛藤をリアルに演じている。

「自分が演じる役が、青春時代のキラキラ輝いていたころとは変わってきていているのを感じています。年齢の変化とともに大人びた役をいただけることが少しずつ増えてきたので、唐突感や違和感はないですね」

長澤さんが演じる由加利は、恋愛も仕事もうまく進めている、中堅世代のキャリアウーマン。
5年間同棲している恋人・小出桔平(高橋一生)との結婚を考えていたが、ある日彼が病に倒れたことで、彼の名前や職業などすべて「嘘」だったことが発覚する。そこから彼の過去を詮索する由加利だが、長澤さん自身は「好きな人の過去は気にならない」と語る。

「出会ったときの彼が自分に合っているなら、私は相手の過去はあまり気にしないですね。どうでもいい、と言うと突き放すように聞こえちゃうかもしれないけど、自分たちは過去と向き合っているわけではないので。今ここにあるもの、目の前にいる人と向き合うことのほうが大事かな」
20代、30代と年を重ねるにつれて「過去」は増えていく。
誰かに自慢したいくらい綺麗な過去もあれば、絶対に言えない暗い過去もある。

恋人の過去を気にするかどうかは人それぞれだが、長澤さんは過去よりも「今」を見据えている人だと強く感じた。
「由加利のように、恋愛に悩んで仕事に支障をきたしてしまうのもあまりよくないですよね。私自身は、仕事は仕事と割り切って、きっちりやるタイプです」

完璧すぎる。
私が昔からあこがれていた彼女には、どうがんばっても絶対に追いつけない。
だって私なんて、恋人の過去が気になって不安になることもあるし、仕事とうまく割り切れない日だってある。
それに加えて、今後のキャリアや、結婚・出産の迷い……。私も、同世代の女友だちも、20代後半になってから徐々に悩みが広く、そして深くなってきた。

もし私たちや由加利のような女性が、長澤さんに悩みを相談したら、どんな言葉をかけてくれるのだろう。
聞くと、彼女はちいさく笑いながら答えてくれた。
「相談してくる時点で、自分の中で答えは出ていますよね」と。
「右か左か、という道があった場合、どちらに進むべきなのか。
それを相談してくる時点で、自分の中で答えは決まっているはず。
みんなと同じ道を歩みたい人もいれば、自分の道を貫きたい人もいますよね。
その背中を押してほしいのだと思うので、私は『そうだね』とひたすら話を聞いてあげます。
何事も、決断するのは自分自身だから。

夢だった仕事に就いたものの、結婚後も長年続けられる自信がなく、仕事を辞めるかどうか悩んでいる女友だちがいた。
それを相談されたとき、私は上手に返せなかったけど、今だったらちゃんと言葉をかけてあげられる気がする。
あなたの中でもう答えは出ているはずだから、自信を持って進んで大丈夫だよって。

「由加利のような年代の女性たちが、壁にぶつかっても必死にもがいて乗り越えようとする姿は、私もすごく共感できます。
人間がその年ならではの悩みに向き合う姿って、とても綺麗ですよね。
一度きりの人生だから、怖がらずにいろんな体験をしたほうがいいと思います」

長澤さんの穏やかな口調が、スタジオにやさしく響いた。
女の子から大人の女性へと成長した彼女のメッセージが、この記事を通して、人生の分岐点に立つすべての女性たちの心に届きますように。

GALAC 30年2月号