北川景子 映画「ラーゲリより愛を込めて」!

北川景子 の映画「ラーゲリより愛を込めて」です。

第二次大戦中の中国・ハルビンで、山本幡男の身内の結婚式が行われました。
山本は4人の子どもたちと妻のモジミで丸テーブルを囲み、家族揃って参列していました。
その夜、爆撃がその街を襲います。
日ソ中立条約をソ連が破って北から日本軍に攻めてきたのです。

宿舎を逃げ出した山本一家。
大勢の逃げ惑う人々で混乱する中で、崩れた石塀の下敷きになった山本は、モジミと子どもたちに向かって「日本に帰れ。大丈夫、すぐに会える」と言います。
ためらうモジミですが、子どもたちを託され、日本に帰る決意をします。家族はそこで離れ離れになりました。

そして、戦争が終わった1945年。
零下40度の厳冬の世界・シベリアへ向かう汽車の中に山本の姿はありました。
捕虜にした日本兵をわずかな食料で過酷な労働に駆り立て、死に逝く者が続出する地獄の強制収容所(ラーゲリ)行きです。
捕虜でほぼすし詰め状態の汽車の中で、誰もが自分の行く末に絶望的になっているのに、ひとりアメリカの歌を大きな声で歌う山本。
離れたところで初めて彼の姿を見た松田研三は、彼は正気ではないと思います。

汽車の旅を終えて捕虜となった日本兵たちが到着した強制収容所(ラーゲリ)では、厳しい労働が待っていました。
山本と一緒に強制収容所(ラーゲリ)入りをした仲間には、戦場で眼の前で友人を失くして心に傷を負って以来何があっても「傍観者」になると決め込む松田研三、旧日本軍の階級を振りかざし山本たちを「一等兵」よばわりする軍曹の相沢光男がいました。

「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます」と、苦しい毎日に絶望する抑留者たちに、山本は訴え続けます。
山本はロシア文学愛好者でロシア語が理解でき、通訳もしていたので、ソ連軍の将校にも抑留者たちの苦しい状況を訴えていましたが、それがかえって悪い結果を生みます。

終戦からしばらくたち、日本への帰国が決まりました。
山本をはじめ喜ぶ抑留者たちは、希望を胸に再び汽車に乗り込みました。
ですが、帰国船が用意された港まであと少しというところで、ソ連軍によって汽車はいきなり止められました。
通訳の山本を呼び出し、1冊の名簿を渡して名前を呼べと言います。
呼ばれた者は汽車から降りなければなりません。
それは帰国(ダモイ)ができないことを意味していました。
名簿には、松田や相沢の名前があり、一番最後に山本自身の名前も載っていたのです。

その後山本たちはソ連の軍法会議にかけられ、身に覚えのないスパイ容疑で25年の強制労働を言い渡されます。
再びラーゲリに収容され、強制労働の毎日を送ることになった山本。
そこで、過酷な状況で変わり果ててしまった同郷の先輩・原幸彦と再会しました。
劣悪な環境下で、誰もが絶望から心を閉ざしていくなか、山本は日本にいるモジミや4人の子どもと一緒に過ごす日々が訪れることを信じ、その苦しさに耐えます。

ある日、強制労働に出た先で黒い子犬が収容者たちについてきました。
子犬は山本になつきますが、その子犬をクロと名付けてかわいがったのは、元漁師で船で漁をしていて捕まった足の悪い青年・新谷健雄でした。
山本は、軍人でもない足の悪い青年までもがスパイ容疑で捕まるのかと驚きあきれます。
山本は苦しい作業が続く毎日の中でも、分け隔てなく皆を励まし続け、そんな彼の仲間想いの行動と信念は、凍っていた抑留者たちの心を次第に溶かしていきます。

終戦から8年が経ち、ソ連・日本の間での手紙のやり取りが認められます。
抑留者たちもそれぞれ家族にあてて葉書を書きました。
山本ももちろんモジミ宛に書きますが、返事はなかなか来ません。
しかし、ある日、ついに山本に妻からの葉書が届きました。
厳しい検閲をくぐり抜けたその葉書には「あなたの帰りを待っています」と。
モジミは4人の子どもを連れて無事に日本に帰っていました。
しばらくは魚を売ったりして生活していましたが、昔の教師仲間の口利きで、学校の教師として復職できました。

たった一人で幼い子どもたちを育てている妻を想い、山本は涙を流さずにはいられませんでした。
誰もが故郷からの便りを手にし、帰国(ダモイ)の日が近づいていると感じていましたが、その頃から、山本は耳障りな咳をし出します。
日本からの葉書で身重の妻が空襲で亡くなったことを知った相沢は、「生きている意味がなくなった」と言い、自ら収容所の鉄格子を越えて脱走兵となり、見張りに殺されようとします。
「それでも生きるんだ」と彼を必死で止めた山本は、突然ひどい頭痛に見舞われ気を失ってしまいました。
救護室に運ばれて回復した山本ですが、以来たびたび倒れるようになっていきます。

故郷からの手紙で母の死を知った松田はそっと涙にくれ、ますます傍観者の殻を被ろうとしますが、山本の体調の悪さが目につくようになると、決死の覚悟でストライキを始めました。
要求はただ一つ、山本を大きな病院に連れて行って検査を受けさせてほしいということ。
ストライキのその輪はラーゲリ全体に広がり、ついに山本は病院で診断を受けることになりました。
しかし、そこで告げられた病名は「のどの癌」で、余命3ヶ月というものでした。

山本により生きる希望を取り戻した仲間たちに反して、山本の症状は重くなるばかりでした。
それでも妻との再会を決してあきらめない山本ですが、彼を慕うラーゲリの仲間たちは、苦心の末、遺書を書くように進言しました。

山本はその言葉を真摯に受け止め、震える手で家族への想いを込めた遺書を書き上げました。

そしてついに、眠るように、山本はその生涯を閉じます。
山本の亡きがらはロシアの地に埋められました。
仲間に託されたその遺書は、帰国の時まで大切に保管されるはずでした。

ところが、ラーゲリ内では、文字を残すことはスパイ行為とみなされ、山本の遺書は無残にも没収されてしまいました。
それからしばらくして、最後の引揚げ船でラーゲリの仲間たちも帰国できることになりました。
喜ぶ原、相沢、新谷たちを乗せ、船は日本へ向かいますが、日本にいるモジミは山本の死亡通知を受け取り泣き崩れていました。

終戦から11年がたった頃、山本家に次々と山本の遺書が届きます。
文字ではスパイ容疑で没収されるからと、原、松田、新谷、相沢は山本が書いた4通の遺書をそれぞれ分担して記憶。
苦しい労働の中でも遺書を暗記し続けていました。
山本家へと来訪した彼らは、暗記した遺書をきれいに清書して家族に渡し「山本の遺書を届けました」と告げました。

モジミは改めて夫・山本の優しさと仲間たちの友情を知り、山本が帰って来たような気がしました。

時は流れて、2022年。
山本の長男・顕一は孫娘の結婚式に出席しています。
老齢となった山本顕一ですが、孫娘の晴れ姿に、はるか昔に父・幡男と一緒にテーブルを囲んだハルビンの結婚式の日のことを思い出していました。